叡智と真理を探究する者のために

ファンタジーの力

「子どもの頃、すべての物には、心があるって信じていたんだ…」なんて遠い目をして語るオトナの皆さまこんばんは。幻想というより妄想を抱いて生きる汚れたオトナの一人オレさまですが、ぽまいらはいかがエロス万歳で生きていやがりますか。



とはいうものの、この寒空の中、若い女の子がナマ足でうろついているのを見ると、エロ目線よりも寒くないのかとかカラダ冷やすのはよくないんだけどなぁ、と気持ちもわくを自分を見て、「これが老化か……」とふと愕然としました。



あー。でもご心配なく。オレさまとエロスは親友じゃけぇ。そう簡単に根滅しては親友に申し訳がたちません。まだまだ仲良く生きていきます。



今日のお話は高次世界の認識する魂の力、つまり前のヘレン・ケラーの話と少しリンクする。今回は、ファンタジーにからめて、「魂の力」を養う力について話すぜ。



世の中、ファンタジーだのメルヘンを小ばかにするオトナも多いからな。スピな世界にだってそんなヤシ―大抵はオヤジだが―もいるくらいなので笑止、だが。



さて。通常、人が世界を認識するとき、心的世界では次のようなプロセスがおこる。(下記図「神秘学講義」高橋巌より)



外界→感覚的知覚→表象・言語→記憶像→概念



人は外の世界を感覚的知覚を通して受け取り、脳内で視覚的イメージと言語的説明によって把握し、記憶化する。そして記憶像とそれに対する概念を持つ。



たとえば、外で「ひまわり」を見たり触ったりするだろ。で、視覚で捉えた内容に「ひまわり」という言葉でラベリングして、自分なりに得た「ひまわりという花」に対する理解(概念)を得るわけだ。



ところが、「ファンタジー」の場合は、逆方向なんだ。


以下、高橋巌「神秘学講義」25pより抜粋。(注:表象という言葉は「イメージ」という意味で読むとわかりやすい)



「ユングはこれとはちょうど正反対の逆の方向をとる、と言います。概念へ至る方向の逆です。つまり、まず内なる世界からある情念の働きが生じます。これは広い意味の情念ですから、本能でもいいし、欲望でもいいわけです。



あるいはあこがれや不安や期待感のような感情でもいいわけです。心の無意識の奥底から、ある種の興奮が、なにか波紋のように心の表面にまで上ってきます。



この働きを<情動>と呼ぶこともできるでしょう。内界の奥底から、ある情動作用が表れます。そしてこの情動の作用が、心の中に潜んでいる記憶像と結びつきます。



魂のもっとも奥底で、ある種の無意識的な要求が、これまでの人生経験が身に着けたいろいろな概念作用の中のどれかと結びつき、意識の表面で表象を呼び起こします。



ところがこの表象は、魂の奥底からあらわれてきた一種の記憶表象ですから、はじめの場合の外界との関連で産み出された表象とはまったくかたちが違います。


後者が言語の論理的関係の中にあるとすれば、この第二の表象は、夢に似たあり方を示します。

(オレさま注:これ初期の霊視と同じ発生プロセス。だから人によって霊視像が異なる。)


この表象ははじめ夢のようにはかない、非現実的な形式を示していますが、更にこのプロセスがすすんでいきますと、最後には感覚的知覚と同じくらい明瞭な形式をとるようになります。つまり幻覚があらわれてきます。」



これが、いわゆる霊視者の霊視、宗教者のヴィジョン、あるいはある種の精神病の幻覚だ。(病気の場合はもっと混乱的イメージだし自分ではまったくコントロールできずに本人を悩ますが、プロセスそのものは同じだったりする。)



高橋巌のここを抜粋したのは、「だからレベルの低い霊視者の霊視内容はアテにならん、夢や妄想的幻覚とかわらん」ということを言いたいわけじゃない。そういう面もあるんだけど。



だが、霊視者と幻覚を見るメンヘラーさんが、同じ認識プロセスを取っているのは興味深いだろ。スピ系が、メンヘラーと紙一重なのも、このあたりに理由がある。



実際、ダスカロスなんかは、幻覚や幻聴を聞くメンヘラーさんに波動を合わせると、同じ幻覚を見たり幻聴を聞くことができる、と指摘する。



それはともかく、いわば内向的認識プロセスと呼ぶべきこの認識プロセスをフロイトなんかは、現実と対立した世界を認識する、つまり空虚で何もうみださないと否定的見解を持っていた。



だが、ユングは違った。むしろ、現実世界と対立するのは高次の現実として、そっちを認識する、と解釈したんだ。



たとえばさ。科学的思考をするとき、人は何かの「現象」を観察して、それにさまざまな理屈をつけて概念として把握していくだろ。まぁ西洋人はこのプロセスこそが文明を発達させたとすぐに思いつき、肯定したくなるわけだ。



だが、芸術ってどうよ?



むしろ表現したい何か(概念)が先にあって、それを把握し、カタチにするために己の世界に入っていくだろ。さきに内向的認識ブロセスとして描いたものと同じ方向をたどるんだ。そしてファンタジー物語を読んで、子どもが自分の内側、空想の世界に行って遊ぶときも、そうなんだぜ。



つまりファンタジーとは健全な「内向的認識プロセスを歩ませる線路(物語)」なんだ。子どもは健全なファンタジーに触れることで、安全に正しく、「高次の世界」を認識する力を育てられる。



それはまさに、ヘレン・ケラーが正しい思考を己の中に流し込んで、世界は美しいと認識したのと同じ作用を子どもの心に与えるんだ。



天使がやさしく歌い、花の精霊が子どもと遊ぶ。そんな童話には娯楽以上の意味はない、とオトナは言うかもしれねぇ。だが、ほんとは子どもが生きていく魂の力を、ファンタジーは与えている。



世界のより高く美しいところを受け取った子どもは、シンプルに、世界は生きるに値すると信じていける。それは大人になり、挫折を味わったとき、簡単に折れたりしない楽観的な健全さを魂の力としてもたらしてくれる。



幼き日に母親に聞いたファンタジックな寝物語や童話が、将来、子どもを絶望から立ち上がる力を与えることになるのかもしれねぇんだ。



ぽまいらも、ちいせぇガキがいるなら、たまにはメルヘンな絵本でもいっしょに読んでやるこった。その一冊が、目には見えない大きな力を与えるかもしれねぇんだからよ。



ま。そんな話だ。

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